働き方インタビュー 014 / イラストレーター にぎりこぷし
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にぎりこぷしプロフィール
にぎりこぷし、大阪のイラストレーター。
(画像の掲載許可をいただいています。)
イラストレーター?
今日はお時間いただきありがとうございます。よろしくお願いします。
お願いします。
ええと、イラストレーターなんですよね?
うーん。そうですね…。
え、違うんですか?
いや、世間から見たらやってることはそうなんですが、自己紹介で、イラストレーターってすんなり言えないんです。
なんでですか?
うーん。もともとイラストの勉強をしてないというコンプレックスもあるんだと思うんです。芸大でもないし、誰にも習ってないので。 小さいときから絵を描くのは好きだったので、ずっと趣味では描いてるんですが、ちゃんと描き出したのは、社会人になって、パソコンを使うようになってからなんです。
でも、今はイラストで生活してるんでしょ。
まあ、そうなんですけど。イラストレーターっていうコトバが恥ずかしい部分があるんですかね。資格があるわけじゃないから、自分で名乗るしかない職業でしょ。
まあ、そうですね。
僕は、会社勤めの時に、趣味でホームページを作ったら、仕事がきて、だんだんボリュームが増えてきて、本業が手にまわらなくなって、独立したんです。そうすると、オレはいつからイラストレーターなんだろうと思うんです。描くということは、会社勤めしてるときからだし。
一般的には、自分が名乗ったときからですよね。
でも、名乗る機会ってないですよね。絵が描ける人と思われて依頼が来るから、こっちから言う機会ってあんまりないので。
でも、「お仕事何されてるんですか?」って聞かれるときはあるでしょ。
そういうときは、「絵とか描いてます。」って答えるんです。そうすると、「油絵ですか?」とか聞かれるから、「コンピュータで描いてます。」って言うんです。「じゃ、イラストレーターですね。」って言われて、「ああ、そうですね」ってなるんですけど…(笑)。
わははは。いつからやってるんですか?
27才で会社を辞めたから、もう10年近くですね。
10年やってたら、立派なイラストレーターでしょ(笑)。
うーん。どうなんでしょうね。
イラストでメシ食ってる人ってそんなに多くないから、やってる人は本当にスゴイと思うんですよ。だから、全然問題ないと思いますよ(笑)。
いや、でもね、コトバのニュアンスなんかな。なんだろ。そこまでスタイリッシュ、クリエイティブな人間と自分のことを思えないんですよ。コトバのイメージと自分のやってることがマッチしなくて。 描いてる人はみんな思うと思うんですけど、そんなにカッコいい仕事ではないですよね。ものすごい地味でしょ。家に籠るし。ネクラな部分があるじゃないですか。
自分の世界に籠る仕事ですからね。
一般の人が思ってるイラストレーターと違う気がするんですよね。
そんなにシュっとしたイメージですかね?(笑)
なんかオシャレな感じで(笑)。
デザイナー的なイメージなんですかね?僕は漫画はすごくクリエイティブな仕事と思うんですけど、生活は地味だと思いますよ。
でも、「漫画家」ってコトバは、もっさりしてるじゃないですか。
ああ。そういうことか。じゃ、「イラストレーター」じゃなくて、「絵描き」ならいいんですか?
そうかな。なんかイラストレーターって実態があるコトバに感じないんですよ。
ちょっと分かったかも。僕は「デザイナー」ってコトバにはちょっとコダワリがあって、「デザイナー」ってすごい人だと思ってるんです。でも、世の中でデザイナーと名乗ってる人が、必ずしも、僕の定義と同じではないんです。たぶん、にぎりこぷしさんの中で、「イラストレーター」というコトバのイメージがスゴイことになってる気がします。
そうかもしれません。世間一般がイメージするイラストレーターが光輝くところにあるような気がしてて(笑)。
でもね、イラストレーターって成果物がイラストでしょ。今の話って、見た目とか振る舞いじゃないですか。 僕は、人物像や振る舞いがどうであれ、アウトプットするイラストでメシを食べてたらイラストレーターだと思うんです。そういう意味では、自分のイラストに満足いってないんですか?
うーん。そうかもしれないな。僕が思うイラストレーターって、自分発で作品を作ってる人なんですよ。
なるほど!
どちらかというとアーティストに近いんです。でも、僕がやってるのは、大部分は頼まれ仕事ですから。 そういう意味では、セルフブランディングができてて、テイストが決まってて、自ら発信してる人。それが作品として評価された上で、仕事がくる人なんでしょうね。
なるほど。
僕はブランディングの部分がまだ甘くて。イラストのイメージはみんなに持って頂いてると思うんですが、無茶を言われることもあるし、どちらかというと、下請け的な仕事が多いですから。
下請けとしてキッチリ仕事する人も素晴らしいと思いますよ。ただ、違うスキルですよね。依頼を受けてイラストを描く人は、イラストレーターの定義から外れちゃうんですか?
そこは難しいですね。職業としてはイラストレーターなんだろうけど、自分が思う理想のイラストレーターではないんです。
なるほど。アーティスト的な感じで、強い立場でイラストを描きたいんですね。
うーん。そうですね。でも、そういう人は知り合いにいないから(笑)。
いやー、なかなかいないんじゃないですか(笑)。
まあ、仕事として依頼をいただいたら、思うようにできないのは、どういう立場でもあると思うんですけど。パッと見て、誰が描いたかすぐ分かるような。
「分かる」っていう部分では、にぎりこぶしさんのイラストは分かりますよ。 ただ、クリエイティブの人って地位を低く見られがちでしょ。だから、多分こだわってるのは、主導権を持てるかってことじゃないですか。お任せで依頼されるような地位になって始めて、イラストレーターという認識なのかなと感じますね。
必ずしも、アーティストとして洗練されてなくてもいいんですよ。今は、要求されたことに対して、かなりの幅で対応できるようになったわけですよ。 でも、できないって帰ってしまう人もいるじゃないですか。「できない」って言ってしまえるのも、ある意味で、イラストレーターじゃないかなって思うんです。
やっぱり、コミュニケーションが対等かどうかを重要視してる気がしますね。
絵がうまい下手とかじゃなくて、「オレは描きたいものを描く」というスタンスをどこまで出せるか。仕事とすれば、妥協の幅を広くとったほうが成立しやすいじゃないですか。
相手もやりやすいですからね。
その妥協の幅が、僕は広く取れるから、ここまで妥協する人はイラストレーターと名乗ってたはダメだと思うんです。
あー、妥協できるタイプなんですね。でも、僕はそれはスタンスだと思ってるので、そこに優劣はないんです。柔軟に対応できて、キャパシティ広いのもスゴイことだと思うので。でも、自分の理想と現実が違ってモヤモヤしてるなら、ちょっと気持ち悪いかもしれないですね…(笑)。まさか、イラストレーターというコトバでここまで白熱すると思ってなかったです(笑)。
ねえ。まだ本題に入ってないですもんね(笑)。
ブログから仕事が来る
いろんな創作活動をやってるじゃないですか。どこから仕事が来るんですか?
営業をやってないので、依頼はサイトからです。ホームページの絵日記を11年ぐらいやってるので、それを見てくれた人がほとんどです。
あの1コマ漫画でしょ。
そうです。毎日描くことを自分のノルマにしてて。
いやー、11年でしょ。本当にすごいことやと思います。続けるってすごい価値ですよ。
人柄も伝わるみたいで、思いもしないところから仕事が来たりしますね。大きい会社からメールが届いて、なんでこの人がオレのことを知ったんやろと思ったら、だいたい昔からブログを見てくれてる人なんです。
すごいウェブっぽいですね。依頼は全部ウェブからですよね?
そうですね。ウェブ以外は知り合いぐらいですね。
もともとサラリーマンだったんですよね。会社では、イラストを描いてたんですか?
いや、描いてないです。教科書を作る出版社で、所属は編集部でした。企画して、文章や挿絵を依頼して、本を作ってたんです。
DTPをやってたんですか?
自分は作業はしなかったですが、Macが何台か入ってきて、小さな冊子を作る研修とかもあったので、ソフトの使い方は学ばせてもらいました。そこで、フォトショップとかイラストレーターも触る機会があったんです。 それで、ソフトを覚えて楽しくなってきたので、iMacを買って描き始めたんです。1999年かな。
それで、ウェブサイトを作ったんですね。何のサイトを作ったんですか?
イラストギャラリーみたいなサイトでした。でも、誰も見に来ないんです(笑)。だから、毎日サイトを更新して、チャットでみんなに報告してたんです。それでも見に来てくれたのは1日10人ぐらいでしたね(笑)。
HTMLはどこで学んだんですか?
それも会社で。新入社員研修に自己紹介のホームページを作るという課題があって、基本的なことはそこで覚えました。
似顔絵ウェルカムボード
なんで似顔絵を描くようになったんですか?
ウェルカムボードを描くようになってからですね。2002年に友達の結婚式のウェルカムボードを描いたんです。そして、1年後に違う友達から依頼が来たんです。でも、正直なところ、そのときは似顔絵が何かよく分かってなかったんです(笑)。
ほお。
でも、周りの反応もよかったので、2006年にウェルカムボードのサイトを作ったんです。
そしたら、依頼がたくさん来たんですか?
来ましたね。
これって、1枚ずつ完全にオリジナルですよね。ヒアリングして、デザインを提案するんですか?
そうですね。最初にプロフィールとか趣味を聞きます。ヒアリングリストみたいなのを作ってて、メールで質問するんです。帰ってきた返事を見て、どういうイラストにするか考えるんです。
なるほど。似せることにこだわってますか?
ウェルカムボードの仕事をやっていく中で、似せるということを意識するようになりましたね。 実は、最初は、必ずしも似てなくてもいいと思ってたんです。
今は違うんですか?
違いますね。似てるということは前提になりました。 それに加えて、どれだけ自分らしくできるかが重要ですね。初期に比べると、似顔絵のレベルはかなり上がったと思います。
描きやすい顔と描きにくい顔がありますか?
ありますね。2人の顔のタイプが全然違うとき、同じタッチで描こうとすると難しいんです。だから、若干タッチを変えてバランスを取ったりしてます。特に、ウェルカムボードは、基本カワイク描かないといけないので、カワイク描くテクニックが必要なんですよ(笑)。
望まれますからね(笑)。
そうですね。だから、似顔絵として面白さを追求するのは難しいですね。たまに、デフォルメしたほうが絶対面白いと思う人がいるんですが、本人だけがダメですね。まわりはみんないいと思ってても(笑)。
まあ、それは似顔絵師みんなが思うところじゃないですか(笑)。 ほとんどの人が、他人のデフォルメは面白いけど、自分のデフォルメはそんなに面白くないものなんですよ(笑)。
まあ、そうですね。
お仕事の中で、ウェルカムボードのウエイトは高いんですか?
売り上げで言うと、全体の1/3ぐらいかな。でも、労力的にいうと、半分強ですね(笑)。
時間がかかってそうですもんね。
アイデアはひらめき勝負なんですけど、カタチにするのに時間がかかるんです。コツコツコツコツやってます。ウェルカムボードはサイズが大きいので、イラストレーターでトレースするから時間がかかるんです。
えっ、完成した状態から、全部トレースするんですか?
そうです。
イラストレーターで線を調整してるんですか?
大きく変えるわけじゃないけど、ペンで引き直してます。ライブトレースだとエッジがでないので、大きいサイズだと調整が必要なんです。
それは大変だ。なんかいい方法ありそうですけどね。似顔絵以外にも本の挿絵も描いてるでしょ。全部トレースしてるんですか?
本の挿絵は、特別指定がなければフォトショップで仕上げます。本のサイズぐらいなら、違いがほとんどでないので。
芸能人の似顔絵
芸能人の似顔絵も描いてますよね?
いや、今はほとんど描いてないですね。もともと業務日誌的にブログを書いてたんです。でも、文字だけだと味気ないから、有名人を描くようになったんです。練習にもなるし、見てくれる人も楽しんでくれると思って。 それで、風刺画の1コママンガを描いてた時期に、政治家を描いてみたんです。 でも、風刺漫画って、ちょっと疎くなると描けなくなるから、忙しくなって、世の中のことが分からなくなって描かなくなったんです。
なるほど。
今はなにか大きなイベント事があるときに描いたりしてます。少し前に、サッカーの澤さんをラフで描いたときに、このシリーズはいける!と思って、なでしこジャパンを全員描こうと思ったんですが、4人で挫折しましたね(笑)。
わははは。澤さんは特徴があるからみんな描いてますね。こういう芸能人の似顔絵を描くときと、ウェルカムボードを描くときって違うんですか?
有名人は怒られることないので、自由に描けます。でも、結局似せようとすると、似たタッチになっちゃうんです。僕は似せるテクニックってそんなにないから。
確かにウェルカムボードと芸能人はタッチが結構似てますね。
ガラッと変えるつもりで描き始めても、最終的によく使うタッチに落ちついてしまうんです(笑)。
たぶん似顔絵師はその「似せる」引き出しが多いんでしょうね。
そうなんですよねえ。ただ、似顔絵というのを考えたときに、「独立した似顔絵」という作品と、「イラストの中の要素としての似顔絵」は別モノだと思うんです。
にぎりこぷしさんは、要素としての顔ですよね。
そうなんです。僕はウェルカムボードの中では、「顔」はサービスの中の1つだと思ってるんです。文字を装飾したり、背景のイラストを描くのと同じなんです。たしかに似ないと意味がないので、ウエイトは高いんだけど。だから、イラストの中で生きる似顔絵の描き方を考えています。
依頼する人は、イラストとしての完成度を求めてると思うので、一般受けすると思いますね。
でも、やっぱりニーズは似ている部分にあるんですよ。背景とか他の部分は描き込めば描き込むほど、感謝されるんです。でも、顔は描き込めむほどフィードバックが帰ってくる気がします(笑)。
やっぱり似てないとダメですか?
そうですね。似てないと商品にならない。 でも、誰を描いても同じ顔になるイラストレーターもいるじゃないですか。その人のファンだったらそれで嬉しいと思うんですけど、少なくとも、僕はそういうタイプではないですから、やっぱりどこまで似せられるかが大切なんです。
それは、最初に言ってた、自分はイラストレーターではない、という話に繋がるんですか?
いや、そういうわけじゃないです。自分が描きたいと思ってやってるので、お客様のためにウェルカムボードを描くことに不満はないんです。ただ、それとは別に、もうちょっと自分のシンボリックな絵を描きたいんです。
それは1コマ漫画じゃなくて?
あれはその1つですね。実は、前は色を使ってたんですけど、今年に入ってからタッチを変えたんです。もともとノートに落書きしてたのがああいうタッチで、もしかしたらこれが自分のナチュラルなタッチじゃないかと思って。
過去を知らないですけど、このタッチはカワイイし面白いと思いますよ!
でも、あれで仕事ができるわけでもないでしょ。 仕事を始めたときは、強烈な線で描いてたんですが、それに迷いはなかったんです。でも、いろいろ描いていくうちに自分の表現の幅が広がって、求められる幅も広がってきたんです。今は描けと言われれば何でも描けますから。 どんなタッチでもうまく描けたらやっぱり気持ちいいわけじゃないですか。だから、タッチを限定しないといけないわけでもないんですが、なんか自分の中で答えが出てないんですよ(笑)。
似顔絵のポリシー
絵描きとしてのポリシーってあるんですか?
うーん。ポリシーなのか分からないんですが、雑な絵が描けないんですね。殴り書きみたいな。
はいはいはい。
常に、線の端と端が繋がってないと、気が済まないんです。 雑な絵を提出するのは失礼な気がして。だから、ラフなタッチに憧れるんですが、仕事の場合は特に描けない。 最初にラフなタッチでオッケーが出ても、納品時には線がキッチリしてる。だから、なんて言うのかな。キッチリしたものを納めたいというのがあるんです。
どうなってると雑なんですか?
うーん。例えば、色を塗る時に、はみ出せないです(笑)。もちろん、表現としてそういう塗り方があるのは分かってるし、自分もそういうの描きたいんだけど、できないんです。根底として、頼まれた仕事は出来るだけ丁寧にしたいんです。
なるほど。イラストのポリシーというか、気持ちのポリシーですね。たぶん、すごい真面目なんでしょうね。いいことだと思いますよ。
まあ、性格ですから(笑)。
僕は1コマ漫画のタッチはカワイイし好きですよ。
小さく描くと出来るんだけど、大きくすると、そのままのタッチで大きく出来ないんですよね。精密になっていっちゃうんです。
すごい分かります。挿絵とポスターって全然違う。サイズが違うと別モノ。 知らない人は拡大したらいいやん、って思っちゃいそうだけど。僕も小さい絵を描くんですけど、そのまま大きくすると、使い物にならないんです。で、ディテールを調整すると違う絵になっちゃうんです。
そうなんです。
トップページの難波の絵も細かいじゃないですか。大きく描くと、細かい絵の集合になっちゃうんですよね。
そうなんですよね。
ああ、分かるー。僕と同じや。
もっとサラサラっと描きたいんですけどね(笑)。 パソコンでしか描かないのも、線がブレると許せないから。フォトショップなら最終的に直せるじゃないですか。
似顔絵の研究
他の人の似顔絵を見て研究したりするんですか?
うーん。研究はしないんですけど。有名人の似顔絵を描くときは、参考にするために画像検索をするでしょ。そうすると、似顔絵も必ず出てくるんですよね。
出てきますね。
そうすると、中には自分のイメージに近くて、特徴をうまく捉えてるのがあるんです。なるほど、こう描けばいいのかって思うんですが、その絵には負けたくないし、捉え方をそのまま真似するのもイヤだし。
そうですね。
だから、参考というよりライバル視する感じですね(笑)。それで、他の人と違う似顔絵を追求してると、自分のタッチが一番しっくりくるから戻っちゃうんです。
いいじゃないですか。
そうなんですね。もっと違う描き方があるんじゃないかと思っていろいろやってみても、結局帰ってきてしまう。でも、そういうときに、自分が肯定できる気がします。
絶えず探求してる感じなんですね。
似顔絵師との交流
似顔絵師との方と交流あるんですか?
少しだけですね。名古屋の仕掛け絵本技師の平塚さんって知ってます?飛び出す名刺を作りたいからイラストをください、ってウェブサイトから連絡が来たんです。
名古屋で「動く似顔絵」を作ってる人ですね。たぶん1人しかいないんで、見たことあると思います。
あの方は、名古屋界隈の似顔絵師と、ものすごい仲が良いんですね。それで、平塚さんとtwitterでやり取りしてたら、さくらたんぽぽさんともやり取りするようになって。
すごく描くのが早い人ですね!
そうです。それで、なんかの話で芦田愛菜ちゃんの話になったんです。あの子は、イメージはすごいカワイイけど、造形としてはそんなにカワイクないんじゃなかってね(笑)。じゃ、描いてみようかってなったんです。
それをTwitterでやり取りしてたんですね(笑)。そうか、それで芦田愛菜ちゃんの似顔絵がサイトに掲載されているんですね。
そうなんです。その2人ぐらいかな。あ、そうだ。1人だけちょっと調べた人がいましたね。USJで描いてる高木さんかな?
ああ、あの人の絵はスゴイですよね!あの人はウェブサイトを持ってないんですよ。
カッコいいですよね。どっかでイラストを見て、ネットで調べたてら、シゴトカンのインタビューにたどり着きました(笑)。
そうなんだ(笑)。ありがとうございます。
あ、ぎょーじさんさんって知ってます?
うーん。聞いたことあるような、ないような…。
京都の方で、週刊朝日の似顔絵塾で年間大賞になったんです。
分かった!漫画タッチの人ですよね。あの人のイラストも面白いですよね。
あの方は、なんか僕の事を知ってくれてて、チャンピオンになったときに、メールをくれたんです。それで、週刊朝日の彼のインタビューに、尊敬するイラストレーターとして僕のことをあげてくれてたんです。
それはめっちゃ嬉しいですね。
ビックリしましたね。その後、メールをやり取りしたんです。
紹介される前は全く面識がなかったんですよね?
そうです。それぐらいです。
面白いなあ。
今後の方向性
今後やりたいこととかあるんですか?
まあ、仕事としては、もちろん面白い仕事をやりたいんですが、それとプラスαで違うモノも描きたいですね。 実は、絵本を考えてます。今は本を作らなくても、発表する方法はいっぱいあるし。
そうですね。電子書籍のインフラが整ってきたからいろいろ出来ますもんね。生み出す人の時代になってきてると思います。
個人でデータを販売することもできるようになってきてますしね。そういうのも含めて、新しいことをやっていけたらいいなと思ってます。
すでにされてるけど、それが当初おっしゃってた自分発信の創作活動だと思うので、どんどんやって欲しいです(笑)。
やっぱり自分が描いたもので、身の回りの人に喜んでもらたいじゃないですか。絵ってそういうもんだと思うんです。請負でも、担当者やその先の見る人に面白いって言ってもらいたいです。まあ、そこで、自分をどれだけ出すかはジレンマもあるけど(笑)。
常に変化していく
今日お話させていただいて、やっぱりイラストレーターだと思いますよ(笑)。
まあ、そうなんですけどねえ。
自分発信の創作活動も十分やってますもん。クリエイティブって完成や終わりがあるわけでもないし、絶えずバージョンアップしていくものだと思うんですよ。 でも、お話しててモヤモヤしてるんだなあって分かりました(笑)。
常にモヤモヤしてるなあ(笑)。
性格なんでしょうね(笑)。
そうでしょうね。でも、昔に比べると、ちょっと割り切れるようになりましたよ。ずっとどんな仕事でも行き着く先があると思ってたんです。金字塔っていうんですかね?野球でいうと、殿堂入りするみたいな。そこまで行ったら、人生あがり、っていうのがあると思ってたんです。 でも、今はそれはない、って思うようになったので、常に変化していこう、成長していこう。って思うようになったんです。 だから、未完成なのは全然オッケーだし、納得いかなければまた変わればいいかって。
僕も全く同じですよ。世の中がこんなにも変わっていく中で、ゴール設定する事自体が意味がなくなったと思ってます。だから、僕も、変わり続けなきゃいけない、って思ってます。満足しないのは成長の伸びしろがあるってことですよ。 勝手なイメージですけど、たぶんイチローも満足しないから、ああいう結果を残せると思うんですよ。周りから見たらもう十分だろって思う状態になっても、きっと満足しない人は満足しないんですよ。 もちろん、満足したらダメっていう意味じゃないです。ただ、満足できないことをネガティブに捉えなくていいと思うんです。
そうですよね。
お会いするまで、芸大の人だと思ってたので、僕と似てる部分があって驚きました。まあ、僕はイラストを本業にしてないので、全然違うんですけど、別の領域を是非築いて欲しいですね。
ビジネス的にも自分としてもそうですね。
まとめ
イラストレーターが「似せる」ことをどう考えてるかが興味あったんです。 でも、思ってた以上に似顔絵な人でしたね。やっぱりウェルカムボードでそれだけ仕事をしてると、似せることのウエイトが大きくなるんですね。
似せることは重要になりましたね。
すごい器用な人だから、どんどん器用になっていってもらいたいです(笑)。
そうですね。何かに特化するほうが、かえって不安になったりするので(笑)。
今回1つ1つに時間をかけて描いてるのを聞いて、考えるところがありました。やっぱ、労力をかけたほうが、感動を生みますよね。作品としての愛着も出るし。
まあ、大変ですけどね(笑)。
僕はもともとプログラマなので、どうしても合理的に進めたくなるんです。でも、合理的に作ったモノって自分の中で感動を生まないんですよね。しっくりいかないというか、出し切ってないというか。なんかそういうの感じました。
大変ですけどね(笑)。
わはは。ていうか、ものすごい考えてる人ですよね(笑)。
めちゃくちゃ考えてるね(笑)。
サイトからそんな印象全然感じないですよ。
大部分な人は能天気な人だと思ってるだろうね(笑)。
驚いた(笑)。
なんかね、うーん。仕事は本当にキツイ。逃げれないでしょ。やってることは楽しいんだけど、そこに向かう姿勢が大変でしょ。だから、本当は嫌い(笑)。だから、酒を飲みに行ったり、バイクに乗って発散してるんです。
それって、生み出す人の苦しみですよね。でも、自己満足できない仕事はイヤでしょ。もちろん、自己満足だけだとダメですけど。
満足ゼロの仕事はイヤですね。
好きな事を仕事にする難しさは、選択した人みんなが通る道だと思います。でも、自分で旗を振ってる人には頑張ってほしいです。それだけでスゴイことなので。今日はいろいろお話を聞けて楽しかったです。ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
あとがき
前回から3ヶ月も経ってしまった久々の更新。平均すると1ヶ月に1人のペースですが、マイペースで続けていきたいと思っています。今回のインタビューは似顔絵師ではなく、イラストレーター。「似せる」ことにこだわってる他の職業の方に話を聞きたかったんです。 僕がインタビューする人は全員初対面なので、やってみないとどうなるか分からない。でも、こんな話になるかなってなんとなくイメージするんです。だけど、今回は予想と全然違った。フリーランスの人のこだわりや不安が詰まったリアルなインタビューだった。
そして、予想以上に共感することが多くてビックリした。絵の描き方だけじゃなく働き方のスタンスが。不安があるのは自然だと思うし、これからは間違いなく生み出す人が活躍できる時代だと思うんです。だから、にぎりこぷしさんにはいろんなものを作ってもらいたい。僕も負けないようにいろんなモノを作ります。いい刺激を頂けました。
描いてもらった似顔絵
目が狂犬病と言われたことを思い出した(笑)。
他にもたくさんの似顔絵があるので、にぎりこぷしさんのサイトも是非見に行ってください。