働き方インタビュー 009 / 似顔絵師 高木祐介
働き方インタビューの9人目は、ユニバーサルスタジオ(USJ)で似顔絵を描いてる高木祐介さん。 Facebookのタイムラインにたまたま流れてきたイラストを見て、メールしました。 関西だから会うのが難しいと思っていたら、たまたま機会があって数ヶ月後にインタビューできました。今回はめっちゃ熱い職人トークになりました!
(画像の掲載許可をいただいています。)
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高木祐介プロフィール
今回もかなり長いです(笑)。気合い入れて読んでください!
似顔絵を描くようになったキッカケ
どうもはじめまして、今日はありがとうございます!早速なんですが、いつからやってるんですか。
早速ですね(笑)。ええと、もう12年ぐらいになりますね。
いきなり席描きデビューしたんですか?
はい。ハガキとペンを持って、商店街に座ったんです。そしたら、女子高生が来てくれて描いたんです。それが初めてです。あの時に誰も来なかったら辞めてたかもしれないです(笑)。
それまでは家で描いてたんですか?
絵は好きなのでよく描いてましたが、似顔絵を本格的にやったことはなかったです。経済学部ですし(笑)。
えっ、じゃ、なんで席描きをしたんですか?
ええと、実はちょっと生意気なキッカケなんですけど、僕の同級生が路上で絵を描いてる人と仲良くなって、呼ばれて公園に行ったんです。そこで初めて、路上で絵を描いてる人を見たんですが、そのときに、自分のほうがうまい、って思ったんです(笑)。今思うと、ほんとに生意気ですよね(笑)。
わはは。それで、すぐ心斎橋で描いたんですか?
そうです。はじめは鉛筆とコピックで描いてましたが、途中から筆ペンも使ってました。
すごいな。チャレンジャーですね。いくらで描いてたんですか?
金額は決めてくださいっていう感じでお客様に決めてもらってました。
どれぐらいの期間やってたんですか?
1年半ぐらいやってました。路上はすごく楽しかったし、大好きだったのですが、実は路上から抜けたくなったんです。似顔絵業界なんて小さいのに、路上似顔絵なんて底辺でしょ(笑)。僕が親なら、自分の子を似顔絵師と結婚させるなんて絶対イヤだと思って(笑)。
抜けてどうしようと思ったんですか?
全然考えてなかったんですが、とりあえず路上から抜けたかったんです(笑)。僕は絵が好きなので、絵が描ければ満足なんで、企業のイベントで描き始めました。
僕の中で、席描きと企業イベントで描くのって同じだと思うんですが、違うんですか?
違いますね。描くことはほぼ同じですけど、路上で描いてると、職業が路上似顔絵師ですけど、企業イベントで描いてると、フリーランスでしょ。経済的にも違いますしね。
なるほど。企業イベントのほうが安定するってことですか。
それはあると思います。
ユニバーサルスタジオではどれぐらい描いてるんですか?
27才から描いてて、もう35才なんで、8年ぐらいになりますね。
じゃ、会社員はしたことないんですよね?
そうですね。サラリーマンはやったことないです。僕はすごく運がいいんです。営業もしたことないんです。
それはイラストがすごかったからじゃないんですか。
そう信じてやってきたんです。でも、世の中はそんな甘いものじゃないですよね。たまたま僕の絵を理解してくれる人が周りにいたんです。友達がイベント会社に僕の絵を薦めてくれたり、よしもとの構成作家の友達に、軽い気持ちでDMを作ったのがキッカケでテレビで描かせて頂いたりね。
何の番組ですか?
大阪に、なるトモって番組があったんですけど、その中に海原やすよ・ともこさんのコーナーがあるんです。 週刊誌の表紙みたいな感じで海原やすよ・ともこさんを5年ぐらい毎週描いてました。もう番組は終わったんですけど、それでテレビ局の繋がりができて、いろんな仕事をもらえるようになったんです。本当に周りの人に助けられてると思います。
高木さんの性格もあるんでしょうね。
そうなんですかね。もっと外に情報を出していかないとダメだと分かってるんですが、なんせ怠け者なので…。ホームページも持ってないんです。席描きで高木さんっていう人の名前を聞いたけど、どこで描いてるか分からないって言われることが多いんです…。
怠け者なんですか?話しをしてて、怠け者の印象は全然ないですけどね(笑)。
すごい怠け者ですよ。だから、せめて絵だけはしっかりしたいと思って(笑)。
大阪は似顔絵に保守的
最初は心斎橋で席描きをはじめたんですが、ヒッチハイクで転々して、いろんなところで席描きをしたんです。東京と大阪で描いて分かったんですが、大阪って変わった絵柄が受け入れられないんです。
どういう絵がウケるんですか?
大阪は早い人やカワイイ似顔絵に人が並ぶんです。でも、東京ではお客さんが似顔絵師で選ぶんです。この人に描いてもらいたいって気持ちが東京のほうが強いんです。
一般のイメージでは、大阪のほうがコダワリが強そうなんですが、似顔絵に関しては逆なんです。面白いぐらい差が出るのが、席描きをするときのブースです。ブースってサンプルが貼ってるでしょ。このサンプルが、東京だと芸能人のイラストが多いんですが、大阪だと「お客さんが似顔絵を持ってる写真」が多いです。関西で芸能人のサンプルを見ることはあまりないんです。
それってどういうことなんですか?
たぶん、芸能人の似顔絵を見ても、自分がどう描かれるかが分からないけど、他のお客様の似顔絵を見るとイメージできるじゃないですか。だから、関西で描いてると、テイストが無難になるんです。なぜか分からないんですが、関西だけちょっと違うんです。
へえ、面白いですね。やっぱり、お客さんの反応で、タッチは変わっていくものなんですか?
そうですね。路上をやってるとどんどん丸くなっていきますね。関西は路上から上がってきた人が多いので、お客さまのニーズがベースなんだと思います。漫画チックなものが多いです。
全体的にリアル系は減ってますよね。
そうですね。お客さまってカップルとか家族が多いんですが、話してても、リアルなイラストを望んでないですね。子供や年頃の女の子なので、カワイイほうがいいんでしょうね。
みんながうまくなればいい
僕が似顔絵師の人と交流しだしたのは、この1年ぐらいで、それまでは籠って描いてたんです。東京タワーで描いてる人はみんな個性的で、田畑さんやjeroさんは自分のカラーで描いてますけど、関西では難しいです。
ていうか、みなさんお知り合いなんですね。
そうですね(笑)。僕はずっと席描きしかしてなかったので、一般的には無難でカワイイほうが受け入れられるっていうのは感じるんです。でも、いろんな人と交流するようになって分かったんですが、こだわって描いてる人のほうが、絵がウマイんです。 こだわってやってる人のほうが画力があって、ごまかさず似せると思います。もちろん、席描きは画力がすべてじゃないので、他の要素も取り入れたほうがいいと僕は思うんですけど、みんながもっとうまくなれば変わるかなと思ってるんです。
変わる?
描いてもらったお客さんが、もし全員が心から喜んだら変わると思うんです。もっと広がると思うんです。
なるほど。
ユニバーサルスタジオには地方からのお客さんが多いので、最近はいろんな人を紹介したりするんです。
うんうん。いいですね。業界を広げる意識はみんなが持ったほうがいいと思います。スタンスが違っても、協力できますしね。でも、自然とそういう動きになってますよね。
そうですね。
日本のアート文化は特殊
似顔絵をずっと描いてきて、感じることってありますか?
うーん。似顔絵に限らずなんですが、日本ではアートの価値が低いって感じますね。たとえば、美術品に高いお金を出すって習慣が日本にはないでしょ。1万円する絵って買わないと思うんです。これって先進国の中で日本だけじゃないですかね。
日本以外の先進国だとアートが経済的に認められているんですか?
日本より認められていると感じますね。たとえば、村上隆さんは、アメリカでは、手書きの1点モノの作品を作るんですが、日本で仕事するときは、広めやすいデジタルコンテンツを作って、1つの単価は安く、たくさんの人に届く作り方をするんです。
それはやっぱり、アートにお金を出す考え方が日本には根付いてないからだと思うんです。似顔絵は昔からあるのに一般に根付かないのはそういうアートに対する価値観もあるように思うんです。
なるほど。海外では似顔絵の価値って日本より高いんですか?
そう感じます。たとえば、海外の新聞で似顔絵が使われると、紙面の半分ぐらいのスペースあるんです。でも、日本では挿絵みたいな使われ方が多いです。
そうか、それは大きな違いですね。
似顔絵と言っても、仕事はほとんどが席描きじゃないですか。ずっと似顔絵を描いてますが、似顔絵師は増えましたが、お客様の人数は増えてきてると思わないんです。
そうなんですね。
ここ1年ぐらいで、いろんな人と出会って、田畑さんやmikiさん達が業界を盛り上げようとしてるのを見て、僕にもそういう気持ちが生まれてきました。だから、こういうインタビューは面白いと思います。
ありがとうございます。僕はこれを業界じゃない人に見てもらいたいんです。 似顔絵師は当たり前のように、世界大会(ISCA)とか日本大会(似顔絵楽座)って語りますけど、そんな大会があることを誰も知らないし、その違いも当然分からないですよ。 「似顔絵楽座」って聞いて、それが席描きの日本一を決める大会というのも分からないでしょ。名前も分かりにくいし、誰も説明してないから(笑)。
分からないですね(笑)。
席描きの方の楽しませるエンターテイメント能力はすごいから、席描きをしてもらうなら、席描きが上手な人にやってもらったほうが楽しいと思うんです。でも、似顔絵がうまいのと席描きがうまいのもちょっと違いますよね。 先日、席描きの日本大会(似顔絵楽座)に初めて行って、スゴイ面白いかったんです。でもね、もっとこうしたらいいのにとかいろいろ思うんです。たぶん、僕は外野やからと思います。関係者はもう見えてないんでしょうね。
そういうのはありそうですね。
席描きの一方で、アウトプットの似顔絵だけで勝負してる職人もいるわけでしょ。それを比べるのは難しいと思うんです。
そうですね。それは似顔絵の永遠のテーマなんです。 やっぱり絵で勝負しないとダメでしょ。っていう気持ちもあるし、来てくれたお客さんを楽しませないとダメという気持ちもあるんです。どっちも僕にはあるんです。
そういう違いをこういうインタビューで解説できたらと思っています。
シゴトカンについて
シゴトカンは読んでますよ。すごく面白いですよ。
そうですか。うれしいです。僕はこのインタビューを無難なものにはしたくないんです。 僕も描いてるから、描いてる人の気持ちは分かるけど、好みはあるんですよ。僕は職人で描いてる人をリスペクトしてて、席描きは別物だと思ってます。 そういうスタンスでこのインタビューを始めたんですが、だからといって、席描きを否定してるわけじゃないんです。だから、見に行きたいし話を聞きたいんです。
でも、意見をズバッと言うと、反対の立場の人って否定されたって思う人が日本には多いんですよ。これって似顔絵だけじゃなくて、いろんなところで僕がぶつかる壁です(笑)。新しいものに触れると、考え方なんて変わっていくじゃないですか。僕も変わります。ちっちゃいコミュニティやから、好き嫌いって言い難いと思うんですが、僕はその時の考えを言います(笑)。
そういうスタンスで深いところに入っていくから面白いんだと思いますよ。
ありがとうございます。似顔絵師はFacebookをやってる人が多いので、みんなシェアしてくれて広まってるみたいですね。でも、なんか怖いとか言われますよ。だから、僕は信念を持ってインタビューをし続けますよ。そしたら、オファーを受けてくれる人も増えると思うんでコツコツ頑張りますよ(笑)。
みんながスゴイ人ばかりだから、尻込みするんじゃないですかね。インタビューに僕が入ったことでハードルが下がったと思いますよ(笑)。
えー、ほんとですか?しらさぎさんもそんなことを言ってましたよ。 でも、僕は業界内の知名度を知らないから、本当に知名度が低いのか謙遜してるのかが分からないんです(笑)。高木さんも有名な気がする(笑)。
似顔絵の描き方
デジタルで描くときってどうやって描いてるんですか?
フォトショップとイラストレーターを持ってるんですが、面倒くさがりなので、フォトショップを立ち上げるのが面倒で…。
でも、高木さんの絵はイラストレーターだけで完結できないでしょ。
いや、イラレだけで描いてます。サインペンで絵を描いて、スキャンして、イラストレーターで着色です。カラー部分をベジェ曲線で描くんです。サインペンの下絵の線をそのまま使う場合と、線もトレースする場合があります。
そんな描き方なんですか!サインペンの線をそのまま使うほうが僕は好きですね。
そうですね。手書き感がでますね。
じゃ、テクスチャーの質感はイラストレーターでやってるんですか。
そうですそうです。
納得。フォトショップでやってると思ってたので驚きです。こんな描き方もあるんだ。このジャックニコルソンもイラストレーターだけで描いてるんですか?こんな塗り方が出来るんですか?
できますよ。たぶんバージョン9ぐらいからできますよ。あと、鉛筆の線を残すこともありますし、色鉛筆で線を描いて、それをそのまま使うこともあります。
そうなんや。知らなかった。僕は席描きの絵は見たことないんですが、どんな感じなんですか?
あるかな。(iPhoneを探しながら。)あっ、こんな感じです。
おお、初めて見ました!これはお客さんにもウケますね。似顔絵って「お客様用」と「自分用」の2つの軸があるじゃないですか。 僕は、昔からしんのすけさんのイラストが好きなんです。彼のイラストって、2つの軸が1つになってる印象なんです。 高木さんも同じ印象です。プロにも素人にもウケる絵ですね。引き出しが多い!
ありがとうございます(笑)。
2Dの似顔絵の可能性を広げたい
一般の人には理解されないと思うんですが、自分の作品ではまた違うタッチで描くんです。
おおっ、すごい。このミスタービーンのイラストはどういうふうにここに行き着くんですか?似せるというより、アートっぽいじゃないですか。
そこの境を無くしたいんです。似顔絵の固定概念を壊したいんです。僕は、対象をまず3Dで考えるんです。そして、ポリゴンで作ったものをバラして、組み替えて、最終的に2次元にしてるんです。
頭の中で?
頭の中でやるときもありますが、だいたいはスケッチします。1人につき、何十枚と描きます。
へえ、最初は普通に描くんですか?
はい。はじめは普通に描きます。
それで、特徴を把握して、描きなおすんですか?
そうです。たぶんピカソと同じです。ピカソに憧れているからかもしれませんけど。で、最終的には完全に2Dにしたいんです。それが2Dの絵の醍醐味だと思うんです。立体とかアニメーションには憧れるんですが、2Dの可能性が好きだから、もっと2Dを楽しみたいんです。エッシャーの騙し絵とかも2Dだからできますし、似顔絵に似せる以外の要素を入れたいんです。
なるほど。面白いですね。似てるだけじゃなくて、いろんな表現の可能性を広げていきたいんですね。面白い!
今と昔で似顔絵の学び方が違う
今の若い似顔絵師は似顔絵師を見て、似顔絵を描いてるんです。しんのすけさんとか田畑さんとかね。
なるほど。彼らの似顔絵はスゴイですもんね。
でも、僕らのときは身近に似顔絵師なんていなかったです。だから、一線で活躍してるイラストレーターとか画家さんを見て、イラストを描いてたんです。 たとえば、僕はロッキンジェリービーン (Rockin” Jelly Bean)のイラストが大好きなんです。
すいません、知らないです…。
映画「キラーコンドーム」のアートワークとか、B”z の「juice」ジャケットを描いてる人です。氣志團 の「One Night Carnival」ジャケットも描いてました。モード学園のCMでもイラストが使われてました。
似顔絵師じゃなくて、一線のクリエイターを見て学んだんですね。
そうなんです。
そういえば、ユニバーサルスタジオの似顔絵師はみんな高木さん風になってるって聞いたことがあります。身近にすごい人がいると、影響を受けちゃうんですね。
みんなではないです(笑)。ただ、席描きはお客様が来ないとお金にならないから、やっぱり周りにすごくお客さんを集めている人がいたら影響は受けると思います。だって、真似すればお客様が増えますから。
なるほど。僕はインタビューを始めるまで、似顔絵って完全に個人商店やと思ってたんです。でも、最近って組織化して描き方を教えてるんですね。ある集団がみんな同じテイストって違和感があるんです。だから、そういう集団で描いてる人とか、真似して描いてる人ってどういう考え方なのか聞いてみたいんです。すごい不思議なんです。
下の子らと話してると彼らにもジレンマはあるんです。すごくあるんです。でも、ずっとそうやってきたんで、どうやったら抜けられるか分からないんです。真似する以外のやり方を知らないんです。
真似したほうが合理的なんでしょうね。
でも、クリエイターとしては、やっぱり自分の表現を突き詰めていくのがべきだ、って僕は思うんです。 僕は、ある人が素晴らしい表現をしたら、じゃ、俺はこうする、みたいに考えるんですが、若い子は、誰かがいいものを作ったら、ああ、そうしたらいいのかって考えるんです。それは合理的かもしれないけど、クリエイターとしてどうなのだろうか。そういう話をよく仲間とします。分からなくなるんです。
難しい…。そこに答えはないし、人それぞれですからね。でも、僕は真似はクリエイトじゃないと思ってます。 0から1を生み出すのがクリエイトで、1を2にするアレンジする能力は別物だと思ってます。 もちろん、うまくアレンジするスキルはそれはそれですごい能力です。ただ、僕は0から生み出す人をリスペクトしてます。稀有な存在だし、尊重されるべきやと思ってます。
僕も0から1を生み出ししたいけど、ほんとうに難しいです。できる人はすごいと思います。なんだかんだ言いながら、誰かから影響を受けてると思います。
真似はどんどんしたらいいと思うんです。創作物は真似から生まれるから。でも、真似を積み重ねた結果、自分流ができるんじゃないですかね。僕は偉そうなことを言える立場じゃないですけどね(笑)。 できないからこそ、出来る人の凄さが分かるし、それを目指してるだけでもすごいと思う。
個性が見つからないっていう人が結構いるんです。僕も自分が個性があるとは思わないんですが、自分の絵を見たら、僕が描いたって分かるんです。個性って絵のタッチだけじゃなくて、滲み出るみたいなところがありますよね。
僕がmikiさんの絵を真似しても、たぶん僕の絵なんです。だから、個性って教わるものじゃないし、抑えられるものでもないと思うんです。
そうなんでしょうね。こんなこと言うと誤解されそうだけど、クリエイターはどうやってもクリエイターなんでしょうね。 ちょっと前に、似顔絵はモノマネと似てるっていう話を妹としてたんです。完全コピーのモノマネとデフォルメしてるモノマネは別物だけど、一般的には完全コピーのほうがウケるのかなって。 つまり、商業的に見たときに、必ずしもクリエイトしたモノが受け入れられるわけじゃないと思うんです。マーケットを見て、最適なモノを真似して何かを創りだしたほうがウケることもあるでしょ。
それも難しいですね。
真似できないモノを作りたい
でも、真似されてるうちは、まだまだなんだろうなっていうのもあるんです。
今回のインタビューは高木さんの自信やコダワリをビシビシ感じます。面白いです(笑)。
偉そうなことを言い過ぎですよね(笑)。
いやいや、それを言うなら僕のほうでしょ。何様やねんって感じでしょ(笑)。
最近は海外のアーティストに興味があるんですが、すごいレベルが高いです。 似顔絵というジャンルでは、日本のレベルは高いと思いますが、アートとして見たときは、海外のほうが絶対スゴイです。 真似しようって思えない。どうなってそんな絵になったのか分からないんです。だから、僕もそういうイラストを描きたいんです。できるか分からないですけど(笑)。 真似されると、正直、腹が立つときもあるんです(笑)。苦労して考えたアイデアをあっさり使われるとね。だけど、真似できないぐらいになればいいと思うんです。
目標が高い!(笑)。僕はこのインタビューを海外でもやりたいですね。英語できないですけど(笑)。 海外のアーティストとコミュニケーションする機会あるんですか?
Facebookですね。僕は英語できないんで、絵でコミュニケーションしてる感じです。絵がよかったら反応ありますけど、ダメだったらまったく反応がないですから、分かりやすいですよ。FUNNY & CRAZY LIKENESS caricature fest!っていうグループがあるんですけど、最近はそこにアップしてます。
イラストレーターがイラストでコミュニケーションしてるのを見ると、カッコいいなと思います。
Facebookでアップすると、僕がアップしたから、「いいね」を押す人が日本では多いんです。どんな作品をアップしても、「いいね」を押す感じ。
ああ、日本はそういうのありますね。作品ではなくて、人に対して「いいね」するみたいなね。
でも、それじゃ、「いいね」の意味がないじゃないですか。海外だと作品に共感してくれる感じなんです。それが僕は面白いんです。
わかりやすい評価ですもんね。
海外でスゴイ人はほんとにヤバイですよ。どうなってるのか分からないです。 アンディっていう人がいるんですけど、すごい似顔絵を描くんです。だから、「なぜこんな絵が描けるのか?」って聞いたことがあるんです。そしたら、僕にはこう見えている、って言うんです(笑)。 育ってきた環境が違うから、発想が違うんです。全然が違うので、刺激的です。
今後は?
今後はどんな風になりたいとかあるんですか?
似顔絵業界がイラスト業界の中で、下に見られているでしょ。僕は弓道部だったんですが、そんな感じ(笑)。 でも、それが正当な評価だと思うんです。イラストレーター、漫画家、似顔絵師の一番トップの人の画力を比べたとき、やっぱり負けてると思うんです。だから、同じ土俵に持って行きたいんです。 ISCA組(イスカ)、竜王賞組って単語が会話の中で出てくるんですけど、そういうのじゃなくて、全員で業界を上げていったほうがいいと思うんですよ。
ISCA組(イスカ)、竜王賞組ってやっぱり分かれるんですね。確かに違いますもんね。業界のステイタスを上げることは、すごく大切だと思います。みんながお互いを尊重したまま共存できると思いますよ。
あまりデフォルメするのは商業用には求められていないって考え方があるじゃないですか。確かにそうだと思うんですが、じゃ、デフォルメされたものがすべて商業用じゃないかというとそういうわけでもないと思うんです。
僕もそう思います。席描きだけじゃなく、新しい仕事をクリエイトしていけばいいと思うんです。 今後どんな似顔絵を描きたいとかあるんですか。
僕の根っこは絵がうまくなりたいだけなんです。 だから、もっともっと上手くなりたい。そして、席描きも自分の作品も両方やっていきたいです。 席描きはやっぱりお客さんが喜んでくれるのが楽しいんです。目の前でこんなに喜んでもらえる仕事ってなかなかないと思うんです。
そうですね。普通選ばない道を選んでるかなのか、似顔絵師は熱い人が多いですね。それに、みんな前向きやと思います。
そう。よくも悪くもポジティブですね(笑)。
そうそうそう。だから、こういうインタビューをすると、プラスのパワーがもらえますよ。だから、楽しいし、僕も続けられると思うんです。ビジネスでバリバリやってる人たちにインタビューして、ここまでパワーがもらえるかというとちょっと分からないですよ。
ヘンな人が多いんで、飽きないです(笑)。
今日はありがとうございました。2時間はあっという間ですね。楽しかったです。これからも頑張ってください。
こちらこそありがとうございます。
(2012年4月17日 梅田のカフェでインタビュー)
あとがき
インタビューもだんだん慣れてきました。その人の人柄がにじみ出るような文章にしたいので、僕は事前に準備しません。対面したときに、僕が感じたことを聴く。それだけ。 文章にしてみると、偉そうなことを言ってる自分に笑いました(笑)。とても恥ずかしい(笑)。 高木さんは、自分のことを怠け者と言いますが、そんなことを全く感じない志が高い人でした。自分の絵だけでなく、似顔絵業界に対してもいろいろ考えがあって、すごく面白かったです。
やっぱ、どんな仕事も世界を見る気持ちは必要だと感じたので、目標の1つに英語インタビューを入れます。長い目で見て、絶対達成しますよ。 僕は、自分が似顔絵を描くよりも、すごい人を紹介したほうが業界が盛り上がると思って、こんなこと始めましたけど、聴けば聴くほど、業界の深さを知ります。やる価値は自分にも業界にもある。
描いてもらった似顔絵
インタビューの数日後に似顔絵が送られてきました。見てビックリ!スポンジボブみたい(笑)。よく、目力があるって言われるんですが、目がイってるなあ。こんな目で見つめてるんやろなあ。けど、怖くないですよ(笑)。
関東で席描きをやっています。高木さんが始めたころはわかりませんが、今は関東にもいろんなタイプの人がいますよ。私のサンプルはお客様といっしょに撮った写真がメインです。私の周りには、特定のモデルがいない「子供の絵」とか「カップルの絵」をサンプルとして出している人が多いようです。
そうですね。関東は関西から流れていった方も多いし、様々な方がいますね。関西は芸能人サンプルを出さない方が多くて、最近やっとチラホラなので。関東でいないという事ではなかったんですよ。ニュアンスが難しかったですね。すいません;^^
返信ありがとうございます。芸能人サンプルは「お客さんをこんな風にお描きします」というより、お客さんの目をひきつけるために出すという意味合いが強いですね。私の場合、芸能人の似顔絵は現場では絶対に描けないタッチで描いていますし(それはそれで問題あるかもしれませんが)。サンプルに関しては何がベストか未だにわかりません。いつも悩んでいます。
僕は席描きは全てはお客様のタメにあると思うので、こう描きますよという以前のお客様の写真と、待つ間も楽しんでいただくという意味で芸能人を出してます。現場でできる事しか出さないという方のやり方もお客様を考えての事で素晴らしいなと思います。どのやり方でもその全てがお客様を想っての事であるのが大事なのかなと。目的が一緒なのにやり方が違うというのも個性で面白いですよね。ただそれが右へ倣えならば、それぞれがもっと模索するべくだとも思います。
高木さんとだったらサンプルの話題だけで一晩話せそうですね(^o^) 高木さんの現場激しく見てみたいけど、そのためだけにUSJに入るのはさすがに辛い……
コメントが細くなってきましたね(笑)千葉さんと語りたいですね〜。苦行になりそうなぐらい長くなりそうですが楽しそうですね^^
おお、いつの間にかすごいコメントが増えている!チバさん!はじめまして、中谷です。佐々木さんの旦那さんですよね。コメントありがとうございます。すっごい嬉しいですw.
2人のコメントを興味深く拝見させていただきました。東京でもいろいろ変わってきてるんですね。僕はインタビューもライターもやったことないので、お話をお聞きした人の真意を表現しきれてないときがあるかもしれません。やりながら上達していこうと思います。気になる点がありましたら、ご指摘いただけると嬉しいです!今後ともよろしくお願いします。
僕もまだまだ若輩で見識も狭いので、色々な意見をこらからも聞いて、変わっていきたいですね。伝わりきらないのは僕が下手だったので(笑)あのインタビューをここまでまとめる力に感嘆しました!
こちらこそ今後とも宜しくお願いします!