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マレーシアの山奥で2泊3日。オーガニック農村で考えたこと

マレーシアの最北部、タイとの国境近くの山奥にあるオーガニックファームに行ってきた。2泊3日の滞在だったけど、「オーガニックとは何なのか?」を考えるいい時間になった。

ペナンから船で渡って、2回バスに乗り換えて、最寄りの街に着くまで4時間ぐらい。そこからは自力で行けないので、迎えに来てもらって30分ぐらい。帰りはアロースター空港まで車で送ってもらった。約90分。そんな山奥でした。

マレーシアで唯一のオーガニック米を作っている米農家。米以外にもいろんな作物を育てていて、天然ハチミツも生産していた。

僕はオーガニックにこだわりはない。食品の成分は見るけど、過度に気にしてるわけじゃない。食べたいものを食べるし、肉も野菜も大好き。なので、ビーガンとか思想を押し付けられるのは嫌い。ただ、何事も「自然な状態」が一番いいと考えているので、オーガニックファームには興味があった。

農家は自立しなければならない

ここのキャプテンは元軍人のマレー人。彼のポリシーは、「Farmer must be independent」。農業をするということは、作物をつくるだけじゃない。それを販売するところまで考えなければならない。国や制度に依存しすぎると、リスクが高い。そういう考え方は共感できる。

「販売までコミットする」「自立しないといけない」という考え方は、農業に限らず、どんな商売でも大切なことだと思う。

鶏、山羊、アヒルがいっぱいいた。走り回ってくれるから土を耕すし、糞は肥料になって、たまに食べられる。

イノシシが出るみたいだけど、イノシシは豚に分類されるから、ムスリムはイノシシが食べられないようです。蛇やワニ、カエルなどの両生類も食べないみたい。

ファームではいろんなものが育てられていた。アボガド、マンゴー、唐辛子、ランソネス、タマリンド、レモン。知ってるものしか覚えていないけど、本当にいろいろあった。

足元に落ちている野生味溢れるレモンを絞ってレモンジュースを飲む。バナナやランソネヤを食べる。超ナチュラルな世界は居心地よかった。

木の家、水シャワーは滝行

滞在したのは木とブロックで作られた家。蚊帳があったけど、小さな穴がたくさん空いていたので、大丈夫かなと思ったけれど、自然の音が心地よくて、案外スヤスヤ眠れた。

ただ、2日目は電気をつけたまま部屋に戻ってきたら、蚊帳の周りが虫だらけになっていてゾッとした。しかも、見たことのない「キレイなゴキブリ」までいた。電気を消してしばらくすると、みんなどこかへ消えていた。

久しぶりの水シャワーも新鮮だった。高地だから朝晩は寒いんです。だから、毎日が滝行気分。シャワーを浴びるだけで気合いが入った。さらにシャワーの足元が砂利石で、足裏が痛い。他の人は平気だったので、自分の軟弱さを痛感。

ムスリムの生活も知らないことだらけだった

イスラム教についても、知らないことが多かった。金曜日・土曜日が休みなんですね。今回、金曜日から日曜日まで滞在したので、ちょうど休みだった…。考えてみれば、週末が土日というのもキリスト教の影響で、日本も昔から土日休みだったわけではないのに、いつの間にか世界中が土日休みだと思っていた。

エコシステムは思ったより科学的

オーガニックのイメージは、映画『奇跡のリンゴ』。農薬や化学肥料に頼らず、自然の力で作物を育てることだと思っていた。

映画「奇跡のリンゴ」のレビュー

今はテクノロジーを使えば、いろいろなことができる。でも、自然にあるエネルギーをうまく利用することは省エネルギー。だけど、自然にただ委ねるわけじゃない。自然を理解した上で、自然の力を利用する。基本設計がかなり考えられていた。

ゴミを肥料にして、微生物が増え、それを虫が食べ、虫を鳥が食べ、排泄物がまた土に戻っていく。そんな循環システムが成立するように土地が設計されていて、「エコ」システムは科学的でした。

実家のようなマレーシアのご飯

食事は家庭料理が次々でてきてエンドレス。グリーンカレーがおいしかった。食べ終わったらお菓子もでてくる。甘いコーヒーもエンドレス。

食べると喜ぶ、残すと悲しそう。

ついつい食べ過ぎる。久しぶりに実家に帰った感じ。

パーマカルチャー

パーマカルチャーという言葉がよく出てきた。これは永続可能な農業(アグリカルチャー)と文化(カルチャー)を組み合わせた造語で、人と自然が共に豊かになる持続可能な社会や暮らしをデザインする手法。もし土地を持っていたら、どうデザインするか?みたいなワークショップが流行っているみたい。経済の話なんだけど、アンチ資本主義な人が多くて、ヒッピーとの境界が曖昧みたい。

慣行農業

初めて聞く用語も多かった。「慣行農業(かんこうのうぎょう)」という言葉もその一つ。最初は「観光農業?」と思って会話が噛み合わなかった。慣行農業とオーガニック(有機農業)の違いは、化学肥料や農薬を使用するかどうかなど、栽培方法の違いなんですね。

コンポスト(Compost)

コンポストという言葉もよくでてきた。堆肥という意味。化学肥料を使わなくても、土に生ゴミなどの生活廃棄物を入れると微生物が繁殖し、それを虫が食べ、さらにその虫を鳥が食べる。そして鳥の排泄物がまた土へと戻っていく。こうした「ゴミが肥料になり、そこからまた作物が育つ」という循環システム自体は、知識として知っていた。だけど、実際に見たことで、「すべてはつながっているんだな」と実感することができた。

人間もその生態系の一部で、人間の排泄物も循環を支える肥料となる。これまで「自然」と「人間」を分けて考えていたけど、自然という大きな循環の中に人間も組み込まれていると考えるほうが、ずっと自然なことのように思えた。

植物も動物みたいなものなのかもしれない

コロナ後、少し家庭菜園をしている。家を空けることが多いので、簡単に作れるバジル、シソ、エゴマ、レモン、カラマンシーぐらいしか育ててないけど、植物って動物と似ている。普通にしていたらどんどん増えるから親や友達にあげるけどすぐ枯らす人がいる。育てられる人と育てられない人がいて、観察力や愛情がないと育たない気がする。

「植物は人間の声が聞こえている」という人もいるけれど、実際に植物を育てていると、「ひょっとしたら、そうなのかもしれない」と感じることもある。

今回、珈琲豆のカスが堆肥になると教えてもらったので、試してみようと思う。狭いスペースでもちょっとした循環システムは作れそう。

完璧なオーガニックではない

生活廃棄物を肥料にしていく様子は面白かった。生ゴミは土の中に入れて、そのまま置いておくと、微生物によって少しずつ分解されていく。堆肥の中にはミミズがいて、ミミズがいるほうがいい状態なのだという。畑にはタガメもいた。それも畑の状態がいいという証らしい。

はじめてハリなしバチを見た。見た目はハエ。ハチミツの巣は剥き出しで、全然管理されてなくて、そのへんを飛んでいる。蜂の巣もイメージと全然違う。

微生物や虫、鳥といった多様な生き物が存在すること自体が、自然の循環が健全に機能している証拠なのだという。人間もその生態系から孤立した存在ではなく、循環の一部として共に暮らしていることを実感させられる。

ここでの生活が「徹底したオーガニック」というわけでもなかったのが面白かった。マレー人はお酒を飲まないけれど、みんなタバコを吸っている。吸い殻もその辺に捨てている。歯磨き粉や洗剤も、その辺に流れている。日本の感覚からすると、「それってオーガニックなの?」と思ってしまう。でも、そこに暮らしている人たちにとっては、それも自然の中での生活なのだろう。「自然の生態系が処理できる量であれば、それほど問題ではない」ということ。ゼロか100かではなく、「その環境が処理できる量」という考え方は僕は好き。

何事も「ちょうどいい量」がある

これは農業だけの話じゃない。経済的に考えれば、人口が増えることにはメリットがある。でも人口が増えすぎると環境に負担になる。

観光も同じ。観光客が増えれば経済的には儲かる。でも、オーバーツーリズムになれば、その場所の自然や文化が壊れてしまう。

食べ物も一緒。完全オーガニックでなくても、多少添加物があったとしても、処理できる量であれば、それは耐性となる。

結局、何事にも「ちょうどいい量」というものがある。そして、多様性というのは多ければ多いほどいいと思った。物事を二極化して白黒はっきりさせるディベートって本当にナンセンスだと思った。

微生物と共存して生きていることを感じた。手を洗うと微生物はいなくなるけど、その空いたスペースにまた微生物は来る。すべてを排除することよりも、いろいろなものと共存しながら、自分自身の免疫や耐性を上げるほうが大事。

何もしない時間が面白かった

このファームでは、畑作業や家づくりの体験ができる。

ファームステイは1日から。ただ滞在するだけでもいいし、農業作業を手伝ってもいい。

ボランティアは3週間から。家作りや畑作業や家畜の手伝いをするんです。農学部の日本人大学生やヨーロッパから来ている家族もいた。子供たちは家づくりを手伝っていて、とても楽しいと言っていた。

正直なところ、田舎生活に慣れてなかったり、虫が嫌いな人には地獄のような環境かもしれない。だけど、みんなこういう体験をしたらいいのにと思う。昔は万人にフィリピン留学をおすすめできた。コスパがいいし、日本人に必要だと思っていた。だけど、もうフィリピン留学は万人にはおすすめできない。だけど、こういう田舎体験はみんなに経験してほしい。いろんなファームがあって、ピンキリだと思うけど、コンフォートゾーンから抜けて何かを感じる1つのコンテンツとしてみんなにおすすめしたい。

今回はタイミングが合わず、そうした作業はできなかったけど、何もせずに自然の中にいて、誰かと話しているだけだったけど、普段の生活では気づかなかったことに気づけて有意義だった。都会にいると、何かをしなければ時間を無駄にしているような気がするんですよね。今回の2泊3日は、そんなことを実感した滞在だった。

福岡正信 自然農法家

その後、こんな映像が届いた。

本もおすすめされたので、読んでみようと思う。