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フェアトレード?どこから搾取?『おいしいコーヒーの真実』のレビュー

おいしいコーヒーの真実

(監督:マーク・フランシス、ニック・フランシス/2008年公開)

アマゾンプライムで見かけた『おいしいコーヒーの真実』というドキュメンタリー映画。コーヒーの豆知識を期待して観たら、まったく違う内容だった。

2008年に公開されたこの映画は、エチオピアのコーヒー農家が直面する国際市場での不平等な取引を描いている。監督はアメリカの映画製作者、マーク・フランシスとニック・フランシス兄弟。作品は、搾取されるコーヒー生産者の現状を伝え、フェアトレードを支持するメッセージを広めようとしていた。

そもそも2008年のドキュメンタリーなので、いまの価値観で評価することに無理があるけど、あえて感想を残しておくと、僕はこの手の映画があまり好きではない。「フェアトレード」という言葉が嫌い。そもそもフェアかどうかの線引きが曖昧で、マーケティングのために使われているだけだと思っている。販売するには金がかかる。品質管理、流通、広告。どこからが搾取なのか?

どんな市場でも、売る力がない側が不利になるのは当然の構造。だからこそ、現場が自力で変えていかないといけない。日本の農村でも同じ。JA(農協)に依存してきた結果、競争力を失ってきた農家の姿とも重なる。

国際市場での不公平な価格設定が問題なのは確かだ。映画の中で、流通業者が間に6社いると言っていた。でも、エチオピア国内の制度—特に土地が国有であること—が、農家の自由や経済発展を妨げている一面もあると感じた。学校や教育機会が足りないことも指摘されるが、それは途上国ではどこでも見られる問題だ。

土地を国が所有し、個人に売買を認めていない体制は中国やベトナムにもあるけど、そうした国々は強い政府によって仕組みを成り立たせている。同じ状況でも、日本人なら外国に文句を言うより、自国政府に不満をぶつけるだろう。どちらが正しいかは一概に言えないが、「アンフェアだ」と訴えるだけでは、グローバル市場で生き残れないと思う。

公開から時間が経った今、エチオピア国内にも変化は見られる。映画では触れられていなかったけど、近年では、自ら販路を開拓しようとする農家や企業も増えてきている。たとえば、エチオピア南部の「イルガチェフェ」地域では、生産者組合が品質管理と輸出を直接担い、ブランド価値を高める努力が進んでいる。こうした動きにスポットライトを当てて応援していくほうが、持続可能で公平な成長に繋がると思う。

いつだって販売力がないと厳しい状態になる。だからこそ、販売力を持ったコンテンツプロバイダーにならないといけない。そんなことを再確認する内容でした。