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『武士道』岬龍一郎訳を読んだ

『武士道』(岬龍一郎訳)

武士道の漫画が面白かったから、本も読んでみた。1900年に新渡戸稲造が英語で書いた『武士道』は日本語訳が何種類かあって、その中で岬龍一郎訳が一番読みやすいってAIが言うからこれにした。『いま、拠って立つべき“日本の精神” 武士道』 (PHP文庫) Kindle版。

新渡戸稲造の『武士道』

武士道の本でおすすめ

めっちゃよかったです。漫画より本のほうが断然深い。「日本に宗教がなくて、どうやって道徳を身に付けているの?日本人って野蛮だ。」という問いに対して、「日本には武士道という精神があり、それによって野蛮ではない!」と海外に伝える目的で書かれているので、海外の宗教や価値観と照らし合わせて解説しています。だから、キリスト教や西洋の事例を知らない僕にはピンとこない部分も多かった。十七章まであるので、気になる人はまずは目次をチェックしてみてください。

キリスト教徒だった新渡戸稲造が、キリスト教の一部に疑問を持ちつつ武士道を語っているのは斬新だった。あと、漫画では書かれてないことも結構あった。例えば、どのように武士道が教育されたか、切腹や復讐、女性の武士道などです。日本人の価値観は、神道をベースにして、仏教、儒教が混ざって、江戸時代のサムライたちによって成熟したと思っていたけど、そういうことは1900年にすでにまとめられていた。

1900年にこの内容は興味深い。現代社会にそのまま生かすことはできないけど、今の日本人も読むべき本だと思った。新渡戸稲造は1900年当時に、武士道が失われて、損得だけが重要視されていくことを悲しんでいた。いまの日本に武士道や大和魂はあるのかはわからないけど、この本を読んで、誰かに武士道を教えられたわけじゃないけど、僕の中には武士道はあると感じた。

読書メモ

  • 武士道が法や制度ではなく、口伝や格言で継承された“行動規範”であること
  • 神道が仏教に足りなかった「忠誠」や「孝心」を補い、愛国心と忠誠心を“情念”として育んだという洞察
  • 知識よりも行動、金銭よりも品格を重んじる思想
  • 女性にも勇気と誇りが求められ、家庭の中でも武士道精神が息づいていたという事実
  • 教師という職業の神聖さ、教育に対する深い敬意
  • 大和魂が、現代にも必要であるという結びの言葉

今の世の中の教育は経済的な側面が強く、金を稼ぐテクニックやスキルを教えることが中心。だけど、昔は人格者を育てるために教育していた。西郷隆盛を育てた鹿児島の郷中教育もそうですね。鎖国で長く続いた江戸時代。士農工商で武士は一番上、商人は一番下。武士が金の話をするのはみっともない。そんな時代に育った武士道は日本の価値観形成に大きい影響を与えていると感じる。

ただ、いまは武士道なんて誰も教えてないし、僕も教わったことがない。自分から探さないと学べない。アメリカや中国の影響を受けて、ガッツリ資本主義社会で生きる日本。集団で生きていうのが得意なのに、向いてない個人主義に進んでいくのはジレンマ。歴史を知ることと腑に落ちることが多い。若い人にはわからないかもしれないけど、武士道は過去の遺産ではなく、日本人の根底にあるものだと、時代遅れと思いつつ、そんな感情がこみあげてきました。

『武士道』(岬龍一郎訳)