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阿波踊り集団「寶船」の挑戦を記した『踊る阿呆の世界戦略』米澤渉

阿波踊り集団「寶船」『踊る阿呆の世界戦略』

「日本の伝統文化を世界に届けたい」——そう考える方にとって、阿波踊り集団「寶船」の挑戦を記した『踊る阿呆の世界戦略』は参考になる。サクッと読めて面白かったです。

NEO阿波踊り集団「寶船」

「寶船(たからぶね)」は世界26カ国を熱狂させた NEO阿波踊り集団。その代表の米澤渉さんの書籍です。

多くの「やりがい重視」の業界では、その瞬間の「気持ちよさ」が優先され、趣味の延長で活動している人が多く、持続性がないことが多い。昔にボランティア団体に関わったんですが、みんないい人で熱心だったけど、継続性を考えている人は少なかった。ビジネスを考えている人はビジネスしか考えてない(笑)。どこの業界も似たような感じかもしれない。

しかし、寶船はしっかり戦略を立てていた。競合調査して差別化するというビジネスの世界で当たり前のことを行い、コンテンツだけでなくセールスも全力を尽くし、ゴールもしっかり設定していました。

以下は印象に残ったポイントのメモです。

「やりたいこと」は「面倒くさいこと」の先にある

夢を追いかける道のりは、華やかさとは裏腹に、「面倒くさいこと」の積み重ね。本書では、「やりたいこと」や「好きなこと」は、膨大な雑務や困難の上に成り立っていると指摘する。「面倒くさいこと」と向き合える人が、次のフェーズへ進める気がする。プロとアマチュアの違いかな。

伝統文化の持つ強みをいかす

バンド活動をしていた著者は、ライブでは人が集まらなかった一方で、阿波踊りには多くの観客が集まるという体験をする。そして、「自身のDNAに流れる土着のリズムをアップデートすること」を選び、阿波踊りを追求していく。海外文化の模倣ではなく、日本人としてのアイデンティティや、伝統文化の持つ力を認識することは大事。

寶船は、伝統文化を現代的に再解釈して、「一糸乱れぬ演舞」よりも、「観客との双方向の熱狂」を目指す戦略を選ぶ。

スピード感の重要性

チャンスを逃さないためには、スピード感が不可欠。想定される問い合わせには事前に回答を準備し、即座に対応できるようにしていたという。当たり前のことだけど、できてない組織は多い。

舞台に合わせたショーの最適化

海外での多様な舞台(日本文化見本市、単独公演、音楽フェスなど)で成功を収めるためには、それぞれのステージに合わせたコンテンツの最適化が不可欠と本書は強調する。持ち時間や観客層に合わせてパフォーマンスを構築する重要性を説いています。

主催者目線の徹底

強く訴えていたのは、「観客はどう感じているか」「主催者は何を求めているか」という視点の重要性。自己満足で終わるのではなく、観客、主催者、スタッフ、スポンサー、メディアなど、あらゆる関係者の視点に立って行動する姿勢が必要だと説いている。

ミッションを明確にする

伝統芸能の世界は、形式にとらわれがち。だからこそ伝統文化なんでしょう。しかし寶船の成功の背景には、「阿波踊り業界のなかでは戦わない。他の道を探そう」という、明確な方向性がありました。

その考え方を象徴する例として、寿司とカリフォルニアロール、抹茶と抹茶クリームフラペチーノなどを挙げてました。これがわかりやすかった。

寿司職人にとってカリフォルニアロールは寿司じゃないかもしれない。だけど、世界ではカリフォルニアロールが大流行。その結果、寿司マーケットが広がったわけです。抹茶フラペチーノも同様で、お茶の専門家からすればニセモノかもしれないが、それをきっかけに抹茶文化は世界へと広がった。古い業界の枠で戦うか?そこから飛び出すか?この2択に正解はない。選ぶだけ。

文化を守ることは大事。だけど、変化にトライすることも大事。このバランスは難しい。「伝統と革新が共存し、文化が刷新されながら広がる。」この本ではそう説明されています。

枠組みから外れたモノは邪道と言われるのは宿命。「ブレイキングダウンは格闘技じゃない」という意見も同じ。寶船さんの阿波踊りは阿波踊りじゃないかもしれない。だけど、「阿波踊り業界のなかでは戦わない。他の道を探そう」という道を選んだからそれでいい。評価されたら誰も文句は言えなくなる。そこまで行けばいい。

国際交流が進めば争いは減る

この本には何か特別な秘密が書かれているわけじゃないです。ただ、寶船さんが、阿波踊りというコンテンツを世界に届けるために試行錯誤した道のりが書かれています。

国際交流が進めば、人と人の関係はよくなる。争いも減る。一緒に阿波踊りを踊っているときには、戦争なんて起きない。不安の多い時代だからこそ、こうした団体がもっと増えて、日本の良さを世界に発信してくれることを願う。

阿波踊り集団「寶船」『踊る阿呆の世界戦略』

阿波踊りや寶船に興味ある方は寶船の公式サイトもチェック!

その後、東京での30周年イベントに行きました。

阿波踊りパフォーマンス集団・寳船の30周年記念イベント

ボランティアを1年間やったときのことを思い出したんです。その時のブログはこちら

プロボノブログ